9月例会 講演レポート
テーマ 「地球温暖化と台風」
講師 NHK名古屋放送局
気象予報士 植木 奈緒子 氏
NAGOYA KEIEI KENKYUKAI BUSINESS & CULTURE
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開催日 平成24年9月11日(火)
会場 料亭 蔦茂
■地球温暖化が引き起こす様々な現象
ここ120年の中で、世界の気温が高くなってきています。
それによって、
世界中で、いろんな変化が起きてきています。
気象庁のデータでは、
この100年ほどで世界の気温が約0.7度上がっています。
100年で0.7度上がることを、
皆さんの体温で考えてみたいと思います。
平熱が36.5度だとしますと、
37.2度にまで、上がってしまうということです。
今、世界の気温は微熱くらい。
今世紀末、世界の気温は、
最大6.4度まで上がってしまうといわれています。
体温でいうと、42.9度。
大変な温度になるわけです。
では、地球温暖化の影響について見ていきます。
北極の氷の分布。
1979年と今の分布を、比べてみると、
北極の氷は半分くらい溶けてしまっている状態です。
ヒマラヤの氷河。
標高が高く万年雪なのですが、
1978年と今の様子では、かなり雪が少なくなっています。
少なくなってしまった雪が溶けて、
下に湖のように溜まっています。
水は低い方へ流れていきますので、最後には海に流れていきます。
その結果、海面上昇という影響もあります。
1993年から2003年までの10年間では、
3.1センチ海面上昇しています。
その一番、大きな原因は、熱膨張。
水は温まると膨らむ性質がありますので、
海水が温まることによって膨らみ、
海面上昇につながっていると考えられています。
その他にも、
氷河、氷帽、氷床が溶けていることが原因だといわれています。
氷河、氷帽、氷床というのは、全て陸の上の氷のことです。
海に浮かぶ海氷が溶けても、あまり海面上昇には関係ありません。
例えば、氷がたっぷり入ったアイスコーヒー。
時間がたって、氷が溶けたからといって、
アイスコーヒーがあふれ出ることはありません。
別のところの氷を
アイスコーヒーの中に入れるとあふれてしまいます。
海面上昇が2003年までの10年間で、3.1センチだったものが、
今世紀、なんと59センチ上昇すると言われています。
台風にも影響がでています。
平成23年の台風12号。
のろのろとした台風で、紀伊半島に大きな被害を与えました。
今まで雨量が2000ミリを超えたことは、
ほとんどなかったのですが、
三重県大台ケ原では2400ミリを超えたところもあります。
大雨になった要因として、
1つは台風の動きがとても遅かったことが挙げられます。
もうひとつは、
強風域は1200キロもある大型の台風だったこと。
そのため、
紀伊半島まで1000キロ以上離れていたにも関わらず、
接近のだいぶ前から台風の雨雲がかかり続け、
長い時間、雨が降りました。
台風のエネルギーは、水蒸気です。
お風呂のお湯が温かければ、温かいほど、
水蒸気が発生します。
それと同じように、
水蒸気をたっぷり含んでいる海の温度が
高ければ、高いほど、
それだけ台風は動きが活発になるわけです。
地球温暖化で海の温度が上がってきている。
それだけ台風の勢力も強くなるわけです。
東海沖の海水温が今世紀末には、
2度上がってしまうという予測結果が出ています。
現在、台湾と日本の海水温の差が2度。
100年後に東海沖の海水温が
今の台湾並の温度になる予測結果があります。
そうすると、
台風の勢力を保ったまま、
東海沖にまで、接近してくるということになる。
温暖化によって、
今後、強い台風が増える恐れがあると気象庁は発表しています。
■地球温暖化の原因と今後の取り組み
地球温暖化の原因として、
ほぼ確実であるといわれているのが、「温室効果ガス」です。
私は、それにプラスして都市化の影響もあるだろうと思っています。
温室効果ガスには、
二酸化炭素、メタン、フロンなどがあります。
この温室効果ガスは、
地球の外を取り巻く、空気中に元々含まれているものなのです。
太陽の光が当たって、
地球の地面付近が熱をもらって暖かくなる。
その熱が宇宙に逃げていきます。
雲や温室効果ガスが、その逃げていく熱を吸収して、
地面に戻してくれる効果を「温室効果」といいます。
この温室効果があるお陰で
地球の平均気温というのが約14度に保たれているわけです。
もし、温室効果ガスや雲がなければ、
-19度という気温になってしまいます。
問題はこの温室効果ガスが、増えすぎたことにあるのです。
ガスはどんどんと熱を吸収するので、
空気が温まり過ぎてしまう。
温室効果ガスの6割が二酸化炭素。
そこでこの二酸化炭素を減らすことで、
地球温暖化が止められるのではないかと考えられています。
では、この二酸化炭素をどうすれば減らせるのか?
自然の中には、二酸化炭素を吸収するものがあります。
例えば、植物、海。
ただ、二酸化炭素の吸収には限度があります。
そこで植物を増やす。
省エネをする。
低炭素社会への行動として
無駄なエネルギーを使わないようにする。
省エネ家電や、LED照明の使用。
車のアイドリングストップ。
というようなことが挙げられるかと思います。
今、天気や地球の恵みを
エネルギーに換える試みも活発になっています。
水力発電とか、地熱発電、雪や氷の熱を利用する、
牛の糞などで電気を作るバイオマス発電、
太陽光発電、風力発電、
波の力や潮の力を使って発電する方法などがあります
2100年までの温暖化の予測を見てみます。
国立環境研究所や東大気候システムセンター、
海洋研究開発機構などが出したシナリオですが、
特に北極付近が温暖化になる割合が大きくなっています。
永久凍土や氷が溶けた影響、
ヒマラヤ山脈の万年雪が溶けている影響が色濃くでています。
このシミュレーションの方法は、
B1、B2、A1B・・・いくつかあります。
A1Bで2100年で二酸化炭素が720ppm出てしまった場合、
今後、世界の気温が最大で4度上がってしまう
という場合のシナリオです。
私たちは、これから温室効果ガスを増やせば、増やすほど、
このシナリオに近づいていく。
減らせば、減らすほど、
一番下のB1のシナリオに近づいていくわけです。
B1の場合は、最高で2.4度、平均で1.8度。
このままエネルギーを使い続けると、平均4度の未来。
地球にやさしい生活に変えていくと1.8度で食い止められる未来。
この2つの選択肢があります。
今、ちょうど私たちは分岐点に立っています。
どちらの道に進むかは、私たち次第なのです。