201311

11月例会 講演レポート 
   テーマ イスラエル、遠くて遠い国を遠くて近い国に
   講師  株式会社サガミチェーン 
       代表取締役 鎌田 敏行 氏  
 NAGOYA KEIEI KENKYUKAI  BUSINESS & CULTURE    
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          開催日 平成25年11月7日(木)    
          会場  札幌かに本家・栄中央店   
今日は日本にとって縁遠いイスラエルという国を、
少しでも身近に感じていただければと思い
お話をさせていただきたいと思います。
学生時代、私は、
第二次世界大戦が終わってから、
世界で戦争をしているのはベトナムだけだと
思っていたのですが、
インターンシップでドイツ滞在中に、
中東でも戦争があり、
新聞記事でも現地紙と日本のそれとは取り上げ方が
全く違うことを知りました。
そこで休学を2年から3年に延ばし、
タダで農業実習ができるイスラエルの集団農場、
キブツに1年行く事としました。
1972年ですから、第4次中東戦争の前年です。
街中でも戦闘があったりする怖い国だと思っていましたが、
行ってみると、「聞くと見るとは大違い」という言葉は
この国のためにあるのではないか
と思う程平和で、農場内は牧歌的ですらありました。
自然でも面白い所で、
イスラエルは3大陸の接点に位置していますから、
動植物の種類も多く、
緑豊かなアイルランドなどと比べても多いと言われています。
シクラメンやチューリップの原種もありますし、
ハチドリやヒョウも生息しています。
イスラエルの自然で一番有名なのは死海でしょうか。
ヨルダンとイスラエルの間にある塩湖で、
流れ込むのはヨルダン川だけで出口はありません。
淡水のヨルダン川からの取水が多いので湖面は
年々低くなっています。
ここではカナヅチの私も安心して浮遊体験ができます。
この一帯は海抜マイナス400m以上ありますので、
海抜下を飛行機で飛ぶこともできる類稀な地域です。
イスラエルは歴史が古いですから、
ギリシャ神話にも登場する場所があります。
テルアビブの直ぐ南にジャッファという町があります。
テルアビブは100年、
ジャッファは4000年の歴史がありますが、
今は合併してテルアビブ・ジャッファと言います。
このジャッファの港に「アンドロメダの岩」があります。
エチオピア王ケーペウスとカシオペアが結婚して
生まれたのがアンドロメダです。
絶世の美女だったようですが、
カシオペアが、海神ネーレウスの美人で知られる
50人の娘を合わせたよりも綺麗だと言った為に海神が怒り、
エチオピアを大波が荒廃させた為、
泣く泣く人身御供に出さねばならなくなってしまいます。
ジャッファの岩にアンドロメダを縛り付けたのですが、
顔を見たら石になるメドゥーサの首を取った帰路に
通りかかったペルセウスが怪物を退治して
アンドロメダと結婚したとされています。
イスラエルというと砂漠をイメージしますが、
北部には穀倉地帯もありますし、
今やイスラエル全土がワインの産地となっています。
ワインの原産地にはギリシャなど諸説があるようですが、
ワインの語源を辿ると、
古典三語の中で最も新しいラテン語でvinum、
次のギリシャ語でoinos、
最も古いヘブライ語でyayinで、
他の二言語はヘブライ語の影響を受けていることが判ります。
現在は、
原産地はカスピ海の南から
東地中海に掛けての広い地域とするのが有力なようです。
ロスチャイルドのフランス家が
イスラエル建国前のパレスチナにワイナリーを作って120年。
小規模で高品質なワインを作るブティックワイナリーが花盛りで、
私は毎年イスラエルに行っていますが、
新しいワインとの出会いが楽しみの一つです。
イスラエルは聖地でもあります。
エルサレムはユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地で、
大元はユダヤ教の聖書である「旧約聖書」です。
アダムから数えて10代目がノアで、
ノアにはセム、ハム、ヤペテという息子がいました。
このセムの子孫がユダヤ人であり、アラブ人とされています。
ノアから数えて10代目が
アブラハム(アラビア語ではイブラヒム)で、
彼が両民族の源です。
アブラハムが
カルデア(現イラク)のウルを出発したのが約4000年前。
因みにチグリスとユーフラテスの合流点に
クルナという町があり、そこに「アダムの木」があります。
そこがアダムとイブが暮らしていた
エデンの園とされています。
「旧約聖書」に依れば、神様がアブラハムに、
アブラハムの子孫を大いなる民とする約束をし、
彼はカナン(現在のイスラエル・パレスチナ)に
住むこととなりました。
パレスチナにはイエスの生まれたベツレヘムがあり、
イスラエルにはイエスの育ったナザレ、
磔となったエルサレムがあります。
ローマ帝国でキリスト教を初めて公認した
コンスタンティヌス帝の母后、聖ヘレナが
紀元325年にベツレヘムで生誕地を、
エルサレムで磔刑の地を特定したとされ、
そこに教会が建っています。
エルサレムの聖墳墓教会には、複数の宗派が共存しており、
争いの種となるのを避ける為、
あらゆることをstatus quo
つまりは現状維持とすることと決められています。
ベツレヘムとナザレには
キリスト教徒のアラブ人が多く住んでいます。
我々はどうもアラブ人=イスラム教徒と考えがちですが、
ユダヤ教ができたのが約3000年前、
キリスト教が約2000
年前、イスラム教は約1400年前ですから、
例えば1500年前のアラブ人は
イスラム教以外の宗教を選ばざるを得なかったので、
それが脈々と受け継がれている訳です。
ユダヤ教は日本人にとって縁遠い存在ですが、
論理には興味を惹かれます。
週に一日安息日があって、
これは神様が天地創造の後、
人間を作って7日目に休息されたからですが、
これをユダヤ人は厳格に守ります。
運動や仕事をしてはいけないので、
この日に公共交通機関は動きませんし、
高層ビルには一つだけ各階止まりのエレベーターが
指定されます。
降りる階を推すと電気が点いて仕事をしたと見做される為、
勝手にドアが開いたので自分は歩いて行っただけだ
という論理です。
冷蔵庫を開けると電気が点くので、
これは前日にテープを貼って開けても点かないように
しておきます。
この安息日で年に1度だけ、
特別に厳格に守る日があります。
ヨムキプール、或いは贖罪の日と呼んで、
この日は空港も閉鎖されます。
この日にエジプトとシリアが
イスラエルに攻め込んだのが1973年10月で、
この第四次中東戦争はヨムキプール戦争とも
呼ばれています。
語源も興味深い分野です。
ヨルダンは建国当初はトランスヨルダンと言っていました。
ヨルダン川の向こう側の国という意味です。
第一次中東戦争、イスラエル側からみると
独立戦争の際にヨルダン川西岸の一部を
トランスヨルダンが占領し、
その後併合したので、
最早川向うの国ではなくなったので
トランスを取ってヨルダンとなったものです。
その後1967年の第三次中東戦争で
イスラエルが西岸を占領したので
再び「トランス」ヨルダンとなったのですが、
国名はそのままとなっています。
産業はどうなのでしょうか。
ユダヤ人は発想が豊かで、
日本人が1を聞いたら10を知るのが得意とすると、
ユダヤ人は0から1を作るのが得意と言えます。
ノーベル賞の約2割は、
世界人口比で0.2%のユダヤ人が受賞しています。
我々の発想では1+1を2とか3とかにしようと考える訳ですが、
これを11にしようと考えるようなイメージです。
イスラエルの比較競争優位性はハイテク、人脈、FTA
つまり自由貿易協定で、この3つとも人工資源です。
イスラエルには
どうしても危険というイメージが付き纏いますが、
私は危険な目には一度も会っていませんし、
多くの日本企業が進出しています。
自然、文化、産業、そして米国への影響力など、
色々と勉強になる面白い国だと思います。