2007年7月 新聞社―破綻したビジネスモデル

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■■ 6月例会 講演レポート
■■■ テーマ  「新聞社―破綻したビジネスモデル―」
■■■■ 講 師 河内孝事務所 代表
■■■■ 東京福祉大学特任教授
■■■■ 慶応義塾大学非常勤講師
■■■■     河内 孝 氏
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                開催日 平成19年7月20日(金)
                 会場   ローズコートホテル
■■日本メディア界の特殊性■■
2004年の新聞協会のデータによると、
新聞の発行部数は中国で毎日8800万部。
日本は朝夕刊を1部と数えると5200万部で世界第二位。
日本の人口の2.8倍のアメリカが5万4千部発行されています。
ここで注目したいのが発行部数ではなく媒体数です。
日本は発行部数が非常に多くて発行媒体が非常に少ない。
会社にとって都合のいい産業体質になっているといえます。
これは「言論の数は民主主義のバロメータ」ということから
考えると、言論の多様性がないということです。
今の日本の107という媒体数はどうしてできたのか?
これは資本主義の競争でもなければ、
企業としての努力の結果ではありません。
第二次世界大戦のお陰です。
日本も1938年の満州事変の直前では1400から1600ありました。
今のアメリカぐらいの新聞社があったのです。
ところが、
国が戦争を遂行していくときに、軍部の文句をいわれてはうるさい。
新聞は少ない方がいいのです。
そこで、当時は「お前の会社は何トン使ってよろしい」というような
原料供給の権限を政府が持っていたわけです。
そのため、
昭和12年から18年にかけて1400あった新聞社が56に減らされました。
愛知県では愛知新聞と名古屋新聞が合併され、1県1紙。
それと全国紙を足して56。
今日の新聞の寡占体質は軍事政権に作ってもらったわけです。
日本の新聞社というのは総動員体制そのままの姿なわけです。
日本の新聞社の産業的な、
もう一つの特徴はテレビを支配しているということです。
新聞社がテレビ局の大株主になっています。
こういう形態は、世界的に見ると非常に例外的です。
新聞社がテレビ局を支配しているのは
民主主義の国ではスペインだけ。
したがって、
テレビと新聞の間でメディア間の健全な議論、相互批判
というのがありません。
■■新聞離れの背景■■
言うまでもなく今、人口は減っています。
その上、深刻なのは30歳以下の人は仮に家で新聞を
取っていたとしてもあまり読まない。
50歳以上の人は、新聞は読んでいても新聞代が高いから
会社や喫茶店、図書館などで読むようになった。
これが新聞離れの背景です。
2004年の通信白書によると、
「何によって情報を得ているか?」という調査に対して、
ニュースはテレビが一番多く80%。
あとは全てインターネットが一番多く、
健康情報60%、生活情報70%、旅行情報80%、遊び情報85%、
勉強情報61%、仕事情報60%となっています
つまり、
情報はインターネットで取れるから新聞は必需品ではない
ということがわかるかと思います。
■■破綻したビジネスモデル■■
今、新聞では広告収入が取れなくなってきています。
2005年の統計によると、
70年代にテレビに抜かれてから何とかついて来たのですが、
90年代のバブルで完全にテレビに差をつけられて
現在テレビが2兆円。
新聞が1兆円です。
インターネット広告は急速に伸びています。
2006年は3600億。
一昨年にラジオを抜き、昨年度、雑誌を抜きました。
このインターネットの上りカーブと、
新聞の下りカーブがいつ交差するかというのを計算してみました。
ここ5年くらいではないかと思います。
例えば
中日新聞は名古屋市内においては70%近いシェアをもっています。
徳島新聞の場合、86%くらいあります。
そういう新聞を含めて、
広告売上げは対前年比で10%は割っているんじゃないでしょうか。
シェアはあっても広告は取れない
部数が多くても広告が取れない
いったいどうしてなのか?
新聞社の社長は「広告がでなくなった」といいますが違います。
新聞への掲載から、メインは折込広告に替わっているのです。
その方が値段も安いのです。
新聞社というのはメーカーです
販売店さんが注文した部数をいれています
その先がどうなっているか知りません
ユーザーの顔が全く見えていないわけです
高度成長期は、
実際に売れている部数以上の新聞を販売店に送り込んでも、
インセンティブと店主のやる気とリベートによって
実際の部数にかえることができました。
ところが今は違います。
高度成長期のビジネスモデルは全く逆に働いてきました。
店には売れない新聞が山と積まれるわけです。
日本で生産されている新聞の10%が産業廃棄物と仮定すると、
杉に換算して200万本くらいは切っていることになります。
売れていない新聞を広告収入のために発行して、
販売店に送り続けて、
梱包のまま製紙工場の溶鉱炉に放り込むのはやめた方がいい。
そう思います。
私が「新聞社、破たんしたビジネスモデル」(新潮新書)で提案した
改革を急いで実行しないと、
日本の新聞社は、いん石で滅びた恐竜と同じ運命をたどります(了)

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