1月例会 講演レポート
テーマ 「久屋公園を一体とした“みんなのテレビ塔”」
講師 名古屋観光コンベンションビューロー理事長
名古屋テレビ塔(株)取締役社長 大澤 和宏氏
NAGOYA KEIEI KENKYUKAI BUSINESS & CULTURE
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開催日 平成25年1月18日(金)
会場 ローズコートホテル
平成24年5月22日に
東京スカイツリーが開業しましたが、
その事業スキームは、名古屋発です。
タワー事業は決して、儲かる商売ではありません。
全国の20のタワーで
全日本タワー協議会を結成して諸活動を進めていますが、
タワー単体では赤字が多いのが実態です。
なぜかというと、
どこのタワーも収益スペースがものすごく狭いからです。
観光事業以外の事業を入れ、
かつ足元に人が集まる仕掛けをしないと
タワーの運営維持はできないのです。
名古屋の他の事業はテレビ放送事業ですが、
東京スカイツリーも同じです。
間もなく東京タワーにある地上デジタル放送送信機能は
全社揃って東京スカイツリーに移ります。
東京スカイツリーの建っている街は、
観光事業から遠い存在の街でしたが、
墨田区が中心となって地域開発計画をつくり、
東京ソラマチという新しい街を開発をし、
そこに沢山の人を集め、
そのうちの約10%の人を
タワーに呼び込む仕掛けをしたのです。
これはちょうど
名古屋市の戦災復興の都市計画の中で、
久屋大通という100メートル道路を造り、
そこに多くの人に来ていただいて、
テレビ塔に呼び込んだという仕掛けと同じです。
大阪の通天閣もそうです。
明治時代に世界で有名な建物をモデルとして建て
博覧会を行った街が新世界としとて残りました。
今でも新世界に集まる人達に支えられているのが
通天閣です。
このようにタワーの足元というのは、
タワーにとって命なのです。
名古屋は全国初ということが得意な街です。
例えば、放送でいえば、
ラジオの申請をしたのも名古屋がトップ。
民間放送のJOAR(中部日本放送)、
FM放送のFM愛知も認可はトップです。
名古屋の街づくりでいえば、
名古屋は2年前に開府400年を迎えました。
江戸時代に近代的都市「名古屋」が誕生し
以降、明治、大正、昭和のそれぞれの時代に
都市計画を推進してきました。
太平洋戦争では、
東京に次ぐ爆弾投下量(原子爆弾を除く)でしたが、
実際の死者、負傷者、家屋の損傷は非常に少なかった。
これは戦前に、
都市計画を活かした防空対策をやっていたからです。
戦災復興政策は、
名古屋が全国で最初に立ち上げました。
国の復興政策計画が発表される前に、
名古屋は発表したことは有名な話です。
市内の幹線道路計画が明確に打ち出され、
市内にあった墓地が平和公園に移されたのです。
名古屋の都市計画はいまだに全国から評価が高いです。
その中心が久屋大通と若宮大通。
2本の100メートル道路です。
当時は、こんなに広い道路を造って、
飛行場を造るのかといわれるほど
かなりの批判もありましたが、
これらは防災道路なのです。
久屋大通は、南北に走っていますが、
中区側がビジネス街、東側が住宅地、
その間を防災道路として通したわけです。
そういう意味では
完全な防災意識を持った都市計画だといえます。
その道路上の真ん中に、テレビ塔を建設したのです。
しかも民間施設として。
道路上に民間施設を造ることは、法的にも極めて難しい。
今も変わりませんが。
このため、高度な政治判断も含めて、
名古屋の官・財・市民が一体となって造られたのです。
ですから
テレビ塔の敷地は
名古屋市土地の道路と公園をお借りしていますが、
今でも厳しい借地条件となっています。
これは、
戦災で身も心もボロボロになるほど
名古屋市民の元気がない。
名古屋城天守閣も燃えてしまった。
そういう中で、
なんとか元気を取り戻そうという気概が、
テレビ塔の建設をするエネルギになったのではないか
と思います。
昭和26年、
日本でテレビジョン放送を開始する旨の国会決議がなされ、
それ以降、全国でいろんな動きが始まりました。
昭和28年、
東京ではNHK、日本テレビ、TBSの送信場所が
バラバラにスタート。
名古屋では、
放送局によって送信場所が異なると
受信者の受信アンテナが何本か必要になり、
非常に不合理だということで、
計画段階からタワー一本化を検討し、
誕生したのが名古屋テレビ塔です。
東京は名古屋の動きを見て、
名古屋テレビ塔が開業した4年後に東京タワーが
誕生しました。
名古屋テレビ塔は、
放送事業者(NHK,CBC)と
名古屋テレビ塔株式会社(以下当社という)とが
塔体資産を分割保有しています。
当社は、観光事業を進める会社として、
株主には愛知県・名古屋市、
そして多くの民間企業の皆さんが出資した会社です。
全国に例を見ない、
塔体資産と株主構成の持ち方になっています。
当社の特色としては、名古屋の観光事業の推進。
これが我々の基本的使命です。
放送事業は放送事業者自身が担当し、
施設運営を放送事業者と当社の共同運営となっていました。
ですから当社は、
テレビ放送が終わったら使命が終わるのではなく、
観光事業の推進
あるいは、街の賑わいづくりに貢献して行くことが、
最も重要な役割となっています。
名古屋の都心部にある久屋大通公園は、
都市の様々な機能を考えますと、本当に素晴らしい公園です。
大須から市役所にかけて約2㎞あまり、
名古屋駅に負けないだけのショッピングを
楽しんでいただけるゾーンです。
その間には愛知芸術文化センター、
NHK、東海テレビなど芸術・情報発信拠点があります。
また、国からも認定されている
全国でも珍しい立体公園「オアシス21」とつながり、
交通アクセスも、地下鉄、3本、
名鉄、バスターミナルもある名古屋駅に次ぐ、
交通の要所になっています。
ところが真ん中にバスターミナルがあり、
テレビ塔の北には、駐車場があり、
動線が切れてしまって、非常に使い勝手が悪い。
大通公園という名前も、有名なのは北海道です。
おそらく地元でも久屋大通公園というのは、
名前が通っていない。
かなりのお金をかけていながら、
現在は外から来ていただけない公園。
このあたりを考えなおしていく必要があります。
外から名古屋駅へ来た人にも
「久屋大通公園に寄って行こうよ」と
言ってもらえるようにならなくてはいけない。
「公園の新しい魅力創出」
それが栄地域にとって大きな課題です。
名古屋市内で観光だけを目的にした施設は
テレビ塔しかありません。
是非、テレビ塔の役割を活かして
観光名古屋の起爆剤にしていきたいと考えています。