201410

テーマ  外国人が見た日本の可能性
講 師 クリス・グレン氏        
    開催日 平成26年10月7日(火)  
    会場  SYONシオン隠れ家風ダイニングバー
僕は1985年、交換留学生として日本にきました。
ほとんどの学生が東海地方だったのですが、僕は札幌。
東海地方に行きたいと思っていた僕としては、かなりショックでした。
ホームステイ先のお父さんの友だちの中に名古屋出身の方がいらっしゃいまして、その方が英傑行列で30回目の家康
を演じたのです。
そんな話を聞くたびに、名古屋への興味がますます大きくなっていったのです。
1年間の札幌の生活を終え、オーストラリアに戻り、放送専門学校に入り、夢であったDJとしてデビューするこ
とができました。
そんな僕の心の中に芽生えた新しい夢は「日本に戻りたい」ということだったのです。
7年間、オーストラリアのテレビ、ラジオ業界で頑張っていましたが、日本に帰ろうと決めたのが1992年7月。
知り合いも、仕事も、何もありませんでしたが、僕には夢だけがありました。
最初は東京でラジオDJとコピーライターとしての仕事をやっていました。
あるとき、あるラジオDJから名古屋で新しいラジオ局がスタートするということを聞いたのです。
僕はすぐに応募しました。
そして、名古屋に移ったのが93年です。
日本の文化や歴史を守るために、2006年からイベントを企画しています。
最初は日本甲冑武具研究保存会のメンバーの人たちと一緒にオーストラリアに行きました。
日豪交流のために、いくつかの小学校を訪問して、書道や折り紙、剣術、火縄銃のデモンストレーションをしたのです。
いろんな国に剣術の文化がありますが、その文化の中でも、剣術が一番すばらしいのは日本だと思います。
これは誇りを持っていいと思います。
いろんな会社がコストダウンのために海外生産しています。
今では中国やベトナム、韓国の方がモノは安く作れます。でも、日本のモノづくりは世界で有名ですし、日本の技術
のクオリティは高いと世界中が思っているのです。
コストも大事ですが、日本の技術のクオリティの高さを武器にした方がいいと思います。
人口を考えると、日本のマーケットよりも、圧倒的に世界のマーケットの方が広いわけです。それが日本にとっての
チャンスです。
大企業だけでなく、中小企業もチャンスがあると思います。
僕がやっているプロジェクトの一つは、日本の魅力を世界に発信するWEBマガジン「Japan World」です。
日本の歴史、文化、伝統的なこと、職人さんのインタビューなどを日本語と英語でアップしています。
外国人に日本の素晴らしい世界を知って欲しい。
同時に、日本人が自分の国の歴史、文化の魅力を再発見できるようにしたいと思っています。
カナダの高校では、このWEBマガジンをテキストとして使っているところもあります。
「Japan World」 http://japanworld.info/
日本の政府は、たくさんの外国人に観光として日本に来て欲しいと頑張っています。
そのために、どうやって日本が世界にアピールするか、ということを考えなければなりません。
僕は、そのPRポイントは、やっぱり、この国の「歴史」だと思っています。
名古屋のインバウンドということを考えた場合の問題はネームバリューがないということが、一つといえます。
世界の人は、東京、大阪は知っている。京都は有名。
もちろん、広島、長崎は知っている。
札幌は2月に雪まつりがあるので、世界のニュースでも取り上げられるため有名です。
ものすごい雪像を世界のテレビや雑誌は、映像や写真をアップするわけです。
でも、名古屋は、そういうことが何もない。
日本とビジネスをしたいと思ったら、外国の人は、東京、大阪と思っている。
でも、経済的に一番強いところは名古屋なのです。
それを世界の人たちは知りません。トヨタは東京の会社だと思っている。
名古屋のことを誰も知らないから、観光をはじめ、新たなビジネスチャンスが生まれる機会が少ないのです。
それは、とてももったいないです。
それでは、名古屋を世界にアピールするにはどうしたらいいか?
僕の提言は、世界へ向けて「SAMURAI CITY NAGOYA」とPRすること。
「SAMURAI CITY NAGOYA」と言ったら、皆「オー」というと思います。
なぜなら、「侍」は、日本独特の文化であり、世界の皆が興味あることだからです。
豊臣秀吉は名古屋に生まれ、大阪にお城を造り、大阪の街をつくりました。
織田信長も名古屋生まれです。
徳川家康は岡崎で生まれましたが、子供の頃は名古屋に住んでいました。
そして家康は、愛知の人、物、文化などを江戸に持っていき、江戸の街をつくりました。
加藤清正は名古屋出身です。
彼は熊本に行き、お城を造り、熊本市ができました。
前田利家は金沢、福島正則は広島を作りました。
徳川宗春、池田輝政・・・
日本の名武将は、ここ名古屋から誕生したのです。
だから、名古屋は「SAMURAI CITY」なのです。
これが私たちのアピールポイントの一つだと思います。
名古屋を世界にアピールするには、もっと名古屋城の魅力をアップしないとダメです。
名古屋城は、400年前からの建築図面が今も残っています。
それに加えて、最後の殿様が、絵カメラが大好きでしたので、ものすごくたくさんの写真を撮っているのです。
天守閣の中だけでも100枚以上残っています。
これだけの資料が残っていれば、ちゃんと復元できます。
木造復元といっても、木が足りないと言われていますが、そんなことはありません。
日本には、愛知県の面積、3倍以上の木があるのです。それを使って、復元をする。
CO2の吸収が少ない大きな木を伐採し、吸収の多い小さな木を新たに植えることで、環境としても良いことです。
名古屋城のコンクリートや鉄筋部分が老化しています。
これからたくさんの修理が必要になってきます。
一部を修理しても、またすぐにどこかが悪くなって修理をしないといけない。
修理の費用もかかる。
そういうことを考えると、木で造り直した方がいい。
ただ、2020年オリンピックのために、天守閣を全て壊して、造り直すのは現実的ではないかもしれません。
天守閣を壊してしまうと、復元途中の本丸御殿しか見るものがなくなってしまい、名古屋城に人が来なくなってしま
うからです。
僕のプランは天守閣復元の前に、城門、焼失した隅櫓や多聞櫓を復元し、名古屋城全体を以前のような状態に復元す
ること。
一部の城門や櫓であれば、2020年までに可能性があると思います。
そのプロジェクトがスタートすれば、世界的にアピールできるのです。
2021年、オリンピックが終わって、観光としては、少し日本が静かになったところで、天守閣を木で復元する。
2027年のリニアモーターカーにあわせて、天守閣が完成すると、海外から多くの人が名古屋に来る理由ができます。
名古屋が元気になると日本が元気になります。
今、毎月、いろんな先生を呼んで、名古屋の歴史や文化、名古屋城のことについて話をしてもらっています。
皆さんには、少しずつ勉強することで誇りを持ち、名古屋の魅力をわかってもらいたいと思っています。
そして、僕たちは、「民間大使」として世界に名古屋の魅力を伝えていくことが大切です。